ZC33Sは2017年の登場以来、世界的にも評価される国産ホットハッチとして確固たる地位を築いてきました。しかし「速くて安くて楽しい」という評価だけを鵜呑みにして購入すると、「なんか思っていたのと違うな」となるかもしれません。
今回はいろんな視点から、ZC33Sに乗らない方がいい人、乗って後悔する人の特徴を深掘りしていきます。
【1】車格やステータスを車に求める人
まず根本的な話として、ZC33Sは全長3,890mm、全幅1,735mm、車両重量約970〜990kgのコンパクトホットハッチです。
同じスポーティな車でも、シビックタイプRやGR86といったピュアなスポーツカーと比べるとステータス性は劣るように感じます。
前にも触れましたが、「キモオタイエロー」と揶揄されるなど、車界隈の中ではネタ的に扱われることもあります。スペック的にはスポーツカー並みではあるものの、クーペタイプのピュアスポーツな車と比べると見劣りする面もあり、「スポーツカーに乗っている」と言い切れない部分もあります。

加えてスズキというブランドの立ち位置的にも、WRCで戦っていた歴史やジムニーの世界的評価はあるものの、プレミアム性を求める層とは合わないように思います。
法人車としての見え方、取引先への印象、駐車場で並んだ時の存在感を重視する方は、満足感を得にくいでしょう。
【2】長距離・多人数移動がメインの人
ZC33Sのホイールベースは2,450mmで、後席の足元空間は数値上は確保されているように見えますが、実際にはセミバケット形状の純正シートの厚みと形状によって、前席を快適なポジションに合わせると後席膝前が圧迫されます。
ラゲッジ容量はリアシート使用時で約265リットル程度。
家族4人の1泊2日でも荷物の積載に工夫が必要です。
また、専用チューニングのモンロー製ダンパーは初期入力に対してやや硬めで、路面の段差や継ぎ目をダイレクトに伝えてきます。スポーツ走行では美点ですが、長距離移動では同乗者から不評を買いやすい特性です。
軽量化のため遮音材が少なめになっており、高速走行時の静粛性があまりよろしくないってのもあります。
【3】純粋なスポーツカー体験を求める人
先ほども言いましたがZC33Sはホットハッチであり、ピュアスポーツカーではありません。駆動方式はFFで、モンロー製ダンパー等の走りのための専用パーツが組み込まれていますが、後輪駆動車のような旋回中のリアの自由度や、ミッドシップ車の回頭性には劣ります。
エンジンはK14C型1.4リッター直列4気筒直噴ターボ、最高出力140馬力/5,500rpm、最大トルク230Nm/2,500-3,500rpm。低中回転域で太いトルクを発生する実用的な特性で、刺激的な高回転型ユニットではありません。レッドゾーンは6,500rpm付近で、自然吸気スポーツのような吹け上がりの快感は薄いです。
サウンド面でも純正状態ではマフラーはとても静かで、官能性を重視する方には物足りなく感じるはずです。まあどの車でも純正状態では基本車好きには物足りないものだと思いますが。
GR86、ロードスター、GRヤリス、ニッサンZ等の現代のスポーツカーと比較検討している方は、それぞれの車が持つキャラクターの違いを理解した上で選ばないと、購入後に「想像と違った」となります。
【4】最新の電子制御や快適装備を重視する人
ZC33Sは2017年デビューで、2020年の一部改良はありましたが、基本的な部分は登場時のままです。アダプティブクルーズコントロールは6AT車のみ、デジタルメーターやヘッドアップディスプレイ、大型ディスプレイオーディオ、電動パーキングブレーキ、最新の運転支援といった現代的な装備は搭載されていません。
なおこれは好みにもよりますが、個人的にはアナログメーターの方が見やすく感じますし、サイドブレーキも手引き式の方が走りを意識した車としては合っていると思いますし、安全装備面でも2型以降は最新ではないものの200万円程でで買えた車と考えると十分充実していると私は感じます。
最新世代の車と比べると、装備面での古さは否めません。「走り以外の部分でも最新であってほしい」と考える方には不満が残るでしょう。
【5】足回り・乗り心地に敏感な人
専用チューニングされたサスペンションは、ロール剛性を高めるために標準的なスイフトより硬めに設定されています。
タイヤは195/45R17で扁平率が低く、標準スイフトサイズより見た目は引き締まりますが路面の凹凸を拾いやすい仕様です。
低速域の段差通過、高速道路の継ぎ目、荒れた一般道では、後席を含めて突き上げ感が若干出ます。スポーツ走行を前提にした味付けなので当然なのですが、家族や恋人を乗せる頻度が高い方は事前に同乗テストをした方がいいでしょう。社外ダンパーやコンフォート寄りタイヤへの変更やインチダウンなどで改善は可能ですが、ノーマル状態を知っておくといいかと思います。
【6】維持費を最小化したい人
スズキ=経済的というイメージから安易に飛びつくと、後悔する可能性があります。ZC33Sはハイオク指定です。レギュラー仕様の同サイズ車と比較してリッター10円以上の差が出るため、年間1万キロ走行で2万円程度のランニングコスト増になります。
とはいえ燃費自体はリッター15km前後と比較的良好で、スポーツモデルとしては優秀な部類です。
タイヤも195/45R17で、レアサイズということもあり銘柄によっては2万~3万円。4本交換すれば工賃込みで10万円超えることもあります。エンジンオイル、ブレーキパッドもスポーツ走行をすれば想定より早く消耗します。任意保険の型式別料率クラスもスイフト標準車より高めに設定されているため、見積もりを取って驚く方も多いです。
【7】中古車を狙う人の追加注意点
中古市場ではZC33Sはタマ数が豊富ですが、改造車・サーキット走行歴あり・事故歴ありの個体が比較的多い傾向にあります。ECUチューニング、車高調、強化クラッチ、軽量フライホイールといった改造が施された個体は、見た目は魅力的でも経年でトラブルを抱えていることが少なくありません。
特にMT車のクラッチとシンクロ、ターボチャージャーの状態、足回りブッシュのヘタりは要チェックです。記録簿の有無、走行距離と年式のバランス、内装のヤレ具合からオーナーの使い方を推測する目利きが求められます。
個人的な見解としては、AT車の方が極端に荒い使われ方をされている個体は比較的少ない傾向があると感じます。
【8】新車で買いたい人
ZC33Sはすでに通常モデルの生産が終了しており、ファイナルエディションも期間限定生産のため、現在は基本的に新車として自由に注文できる状況ではありません。ディーラー在庫やキャンセル車が残っていれば購入できる可能性はありますが、誰でも選べる状態ではなく、いわゆる在庫頼みの状況です。
また、仮にファイナルエディションの在庫が見つかったとしても仕様面での制約があります。ボディカラーは専用のツートン設定が中心で、単色カラーを選べるのは基本的に通常モデルのみ(チャンピオンイエローを除く)という点には注意が必要です。
実際、私自身も黒のATで絞って探していたため、希望条件に合う個体がなかなか見つからず、購入までに少し時間がかかりました。
新車で買いたかったなーと購入が遅れたことを後悔しました
そのため、「色や仕様を自分で細かく選びたい」「完全な新車にこだわりたい」という人にとっては、満足のいく個体を見つけるのが難しくなっている状況です。現実的には未使用車や低走行の中古車も視野に入れて探す必要があります。
【まとめ】
ZC33Sは「軽量コンパクトボディ+必要十分なパワー+安価な価格」という要素のある名車です。しかし、車格・ステータス・快適性・最新装備・大人数対応・スポーツカーとしての記号性を求める方にとっては、購入後にギャップを感じやすい車でもあります。
スズキスポーツの伝統と思想を理解した上で、自分のライフスタイルと求める価値観に合致しているかを見極めることが、後悔しない選択への第一歩になります。

